この本は,ゴルバチョフからエリツィンに主役が交代する時期に,ロシアがかかえる,ひとことではいえないさまざまな問題をあつかっている. とくに,のちにプーチンをも苦しめることになる生産・流通の問題点などを分析している. とくに印象にのこったのは 「資本主義との対決に一喜一憂する中で,我々は何世紀にもわたって人類が創り上げてきた多くのものの意義を明らかに過小評価したのである」 というゴルバチョフのことば (p. 74) である. このことばは,「資本主義」 や 「人類」 を日本をとりまく局所的な文脈でよみかえることによって (たとえば 「人類」 を 「日本人」 とよみかえることで) 破壊的なマルクス主義の影響からぬけだしていない現在の日本にも警鐘となるであろう.
評価: ★★★☆☆
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3 つの章のうち 2 つはソビエト崩壊の予測に関係している. しかし,3 章では突然,日本の非武装中立論を批判している. 1990 年前後の小室直樹の本は饒舌で脱線が多いが,それにしても…
評価: ★★★☆☆
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北朝鮮や共産主義時代のポーランド,チェコスロバキアからフランス,イタリアなどまで,"なつかしい" 20 世紀の旅行記である. 旅行すると町を歩きまくる私にとってはそれなりにおもしろい話だし,旅行のひとつのたのしみかたがわかるともいえる. しかし,もうふるい話なので,これから旅行するときには,あまりやくにはたたないだろう. というわけで星 3 つ.
評価: ★★★☆☆
この本は、最近多数出版されている自虐史観のみなおしに関するものである. 米軍の占領政策のなかで日本人が洗脳されたという指摘はすでにさんざん読まされているが,この本では日本が戦前あやまった方向にふみだすにあたっても,また戦後の占領政策も最近の 「ジェンダーフリー」 運動も 「社会主義」 に影響されたと主張している. なにもかも 「社会主義」 のレッテルをはりつけてしまうことで真実をかくしているようにおもえる.
とはいえ,大陸における戦争の一因をもともと日本の弱腰外交,英米と協調した出兵をしなかったことなどをもとめている点などは,きくに値するようにおもえる. 弱腰ではかえって戦争をまねいてしまうということはドイツに対する各国の対応でもいえることであり,現代日本にもあてはまるとおもう.
評価: ★★★☆☆
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第 1 次産業革命によってスキルを必要としなくなった資本主義社会は低賃金と長時間労働をうみだしました. こうした状況をマルクスは 「窮乏化」 ということばで表現しました. 原因はちがいますが現代の労働市場においても非正規雇用による低賃金と,正規・非正規をとわず長時間労働がひろがっています. にもかかわらず,「窮乏化」 をはじめとして,こういう現在の状況を社会主義の理論にあてはめる,あるいはアナロジーをこころみる議論は,あまりみあたりません. 過去の議論が現在の状況にそのままあてはまるわけではありませんが,もういちど,社会主義,マルクスなどをおもいだしてみてもよいのではないでしょうか?
米国政府は北朝鮮のテロ支援国家指定解除への手続きをすすめている. それが実現すれば北朝鮮の拉致問題解決に関してつかえる重要なカードが 1 枚へってしまうといわれている. これに対して,北朝鮮につけこまれないためには 6 カ国協議の各国の政府が協調することが必要であり,日本の内閣にできることはかぎられているとかんがえられる. しかし,米国でも議会のなかには政府の決定に反対し,テロ支援国家指定解除を阻止しようとするうごきがある (「北朝鮮のテロ支援国家指定 解除停止狙い米下院に法案」 など). 日本でも内閣以外の機関がそれにしばられる必然性はない. 家族会とその支援者がこういうひとびとと協調していくことが,北朝鮮にさらなる圧力をかけていくことになるだろう.
小林 多喜二 の 「蟹工船」 を 「愛蔵版 ザ・多喜二」 で読んだ. この小説の存在は中学生ころから知っていたが,読んだことはなかった. 最近この小説が非正規雇用者を中心としてよく読まれていて,非正規雇用問題と関連づけてさんざん議論されているが,論じられていない点も多々あるようにおもえる.
太平洋戦争によって日本はアメリカにひどくいためつけられた. しかし,そのアメリカが戦後たたかってきたソ連の脅威を,戦前にただしく把握し,たたかったきたのは日本である. 当時それをアメリカがただしく認識していなかったことが太平洋戦争をまねいた原因のひとつなのではないだろうか?
非正規労働者によまれているというので 「蟹工船」 を読んだが,それ以来,非正規労働者の見方になれる政治勢力がいるとすれば,それは日本共産党をおいてほかにはないとおもってきた. きょう (2009 年 1 月 11 日) の朝日新聞には,共産党が実際にそういう方向にうごいているらしいことが報道されている.
朱鎔基は中国に市場経済を根づかせ 「資本主義を不言実行」 した,もっとも注目するべき指導者である. にもかかわらず,日本ではあまり有名だとはいえないのは,著者によれば日本のマスコミが 「痴呆状態」 だったからだという. それでも 1998-2000 年ころには日本でも朱鎔基をとりあげた本が何冊か出版されていた. しかし,私自身,最近まで朱鎔基に注目していなかったので,これらの本も目にとまっていなかった.
江沢民が中国のナンバーワンだったことは,もちろんよく知られている. 江沢民がみいだされたのは天安門事件がおこったとき上海ではおおきな混乱をおこさずにすんだためだというが,それも朱鎔基がいたからだという. 市場経済化にあたっても地域ごとに具体的な指示をだし正確な数値の報告をもとめたという. また,自分がだした指示にあやまりがあればすみやかにそれをみとめて補足したという.
私はまだ朱鎔基に関する本をこれ 1 冊しか読んでいないので,これが彼を知るのに最適かどうかはわからない. しかし,この本を読めば朱鎔基がどういう人でありどういう経済政策を実行したのかをいろいろな角度から知ることができる.
評価: ★★★☆☆
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最近没した加藤周一を (サヨク中心に ?) たかく評価するひとがおおいので,あらためてその著書を読んでみようとおもった. 20 世紀は最後の何年かをのぞけば社会主義と資本主義との対立の時代だった. だから,「20 世紀」 をタイトルにかかげる本書が社会主義を最大のテーマとしているのは当然のことだろう. アメリカ中心の新自由主義がくずれたいま,もう一度,社会(民主)主義をみなおす必要があり,この本もそれにやくだつかもしれない.
しかし,この本で議論されているのは理念であって,現実の経済や社会をよくみていない. 著者が太平洋戦争に反対してきたのは 「実際の情報に通じていたからではなく,[中略] 価値判断であって,これは事実判断ではなかった」 という. 事実を把握できない状態では事実にもとづかない価値判断をせざるをえなかったということであって,やむをえないことだったのであろう. しかし,著者は現代のできごとについても,知ることができるはずの事実をみないまま価値判断をしているようにみえる. とくに,20 世紀は経済の時代でもあり情報化の時代でもあったのに,それらにほとんどふれないままになっているので,「私にとっての 20 世紀」 ではあっても,「みんなにとっての 20 世紀」 にはなりえないだろう.
評価: ★★☆☆☆
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