NGN (Next Generation Network, 次世代ネットワーク) とは,通信キャリアが従来の電話網にかわるものとして構築しようとしている,インターネット・プロトコル (IP) にもとづくネットワークである. ここではその背景を中心として NGN について説明する.
G. Bell による電話機の発明の直後から,電話網としては,すなわち音声を目的の場所まで伝送するためには回線交換が使用されてきた. それに対してデータ伝送をおもな目的とするインターネットにおいてはパケット交換が使用されてきた. しかし,第 1 に 2000 年ころまではネットワーク・トラフィックとしてデータより音声のほうが優勢だったが,現在ではデータ通信のほうがはるかに多量になったため,音声通信のためにもパケット交換網を使用するほうがコスト的に有利になった. 第 2 に音声通信をデータ通信とくみあわせて使用するユニファイド・メッセージングのようなアプリケーションのためには,両者をひとつのネットワーク上であつかうほうが都合がよい.
これらの 2 つの理由などによって,すでにインターネットを使用して音声通信をおこなう IP 電話がひろく使用されるようになってきている. しかし,インターネットは電話網にくらべると簡便性やセキュリティにおいて課題がある. そこで,IP ネットワークの長所をとりいれて再構築しようとしている次世代の通信網が NGN である. いいかえれば,NGN は電話網とインターネットとの融合という課題に関する電話の側からの解である.
ネットワークとしては上記の電話網,IP ネットワークのほかに放送網もあるが,NGN においては広域のストリーミングサービスすなわち放送サービスも標準化する,すなわち前 2 者の融合にくわえて通信と放送との融合もはかる予定になっている.