ユーザの登録法,サービス提供者,サービスまたはアプリケーションサーバの登録法,通信相手および通信中継者の発見法に関する調査結果について記述する.
ユーザの登録,サービス提供者,サービスまたはアプリケーションサーバの登録,および通信相手や中継者の発見の問題は,統一的にみればネットワーク上の資源やエンティティの発見の問題として扱うことができる.この問題は小規模のネットワークから大規模のネットワークにいたるまで,常に重要な問題だった.そのため,大域的ネットワークのためには DNS や LDAP などの技術が開発され,局所的ネットワークのために SLP,JINI,UPnP などが開発されてきた.また,最近では,大規模で公的なネットワーク上にオーバレイされたより私的なネットワークのために VPN,P2P,グリッド,Web サービスなどに関する様々な技術が開発されるようになった.これまで調査したかぎりにおいては,これら 3 種類のネットワークにおける資源・エンティティ発見の問題を統一的に扱うことができるモデルは存在しない.そこで,この項では資源・エンティティ発見の問題をこれら 3 つの分野にわけて論じる. 個々の技術についてはそれぞれ別項において開設する.
- (1) 大域的ネットワークにおける検索
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インターネットのような大域的で大規模なネットワークにおいては,ホスト・コンピュータなどの資源に名前をつけてその情報をディレクトリにおいて管理したり,ネットワークを使用する人間の属性などをディレクトリによって管理することが重要だった.そのため,大域的ネットワークにおいて使用できる技術として,つぎのような技術が開発されてきた.
- インターネットにおけるホスト・コンピュータ検索のために IETF (http://www.ietf.org/) において標準化された DNS (Domain Name Service - 別項で解説)
- Dynamic Delegation Discovery System (DDDS) (別項で解説)
- SIP およびインスタント・メッセージングとプレゼンスのための SIP 拡張である SIMPLE (Session Initiation Protocol for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions) における URI やプレゼンスの登録・イベント処理の機能 (別項で解説)
- (2) 局所的ネットワークにおける発見
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局所的で小規模のネットワークとくに LAN (Local Area Network) においては,とくにホーム・コンピューティングやノマーディック・コンピューティング (nomadic computing,つぎの論文において提唱された概念である: R. Bagrodia, W. W. Chu, L. Kleinrock, and G. Popek: Vision, issues, and architecture for nomadic computing, IEEE Personal Communications Magazine, pp. 14–27, 1995-12) との関係において,PDA やプリンタなどのデバイスが LAN に接続されると相手を自動的に発見して相互に認識しあうことにより,PDA からの印刷などの操作が可能になることが重要な課題とされてきた.この場合には,ディレクトリの存在を仮定する場合もあるが,ディレクトリなしに上記のような機能を実現する方法も工夫されてきた.
局所ネットワークをおもな対象としている技術として,つぎのようなものがある.
- IETF において標準化された SLP (Service Location Protocol - 別項で解説)
- Sun Microsystems 社が Java のための環境として開発した Jini (別項で解説)
- Salutation コンソーシアム (http://www.salutation.org/) によって制定された Salutation (別項で解説)
- UCB の Ninja プロジェクトにおける SSDS (Secure Service Discovery Service - 別項で解説)
- Microsoft 社などが開発した UPnP (Universal Plug-and-Play - 別項で解説)
- Bluetooth の仕様の一部である SDP (Service Discovery Protocol - 別項で解説)
- HAVi (The Home Audio/Video Inter-operability) における機器発見の機構 (別項で解説)
- IBM において開発されたモバイル計算を目標とした適応的なサービス・フレームワーク MOCA における登録・発見のサービス (別項で解説)
- (3) オーバレイ・ネットワークにおける発見
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大規模で公的なネットワーク上にオーバレイされたより私的なネットワーク上において,これまでは 1 台のコンピュータや LAN 上でしかできなかった計算や資源共有をするために VPN,P2P,グリッド,Web サービスなどに関する様々な技術が開発され,その上での資源やエンティティの発見が重要な課題とされるようになった.このようなオーバレイ・ネットワークをおもな対象としている技術として,つぎのようなものがある.
- Object Management Group (OMG, http://www.omg.org/) によって開発された CORBA の名前サービス (Name Service) およびトレーダ・サービス (Trader Service) (別項で解説)
- Web サービスにおける UDDI (Universal Description, Discovery and Integration 別項で解説)
- Sun Microsystems 社などによって開発された P2P 技術 JXTA (ジャクスタ) における発見のためのプロトコル (別項で解説)
大域的なネットワークにおいては (2) は直接関係しないが,(1) および (3) は関係が深い.また,従来は局所ネットワークだけで実現されていた機能を今後オーバレイ・ネットワークにおいて実現していくことが課題であるとすれば,(2) も重要である.
上記の様々な発見機構の比較は次のような文献において行われてきた.
- R. E. McGrath: Discovery and Its Discontents: Discovery Protocols for Ubiquitous Computing, Department of Computer Science University of Illinois Urbana-Champaign, Urbana UIUCDCS-R-99-2132, 2000-3, http://www.ncsa.uiuc.edu/People/mcgrath/Discovery/dp.pdf.
- C. Bettstetter and C. Renner: A Comparison of Service Discovery Protocols and Implementations of the Service Location Protocol, 6th EUNICE Open European Summer School: Innovative Internet Applications (EUNICE 2000), Twente, Netherlands, 2000-9, http://www.lkn.ei.tum.de/lkn/mitarbeiter/chris/publications/eunice2000-slp.pdf.
- J. R. Moorman, J. W. Lockwood, and S.-M. Kang: The State of Service Protocols, http://citeseer.nj.nec.com/moorman00state.html.
- A. Rakotonirainy and G. Groves: Resource Discovery for Pervasive Environments, On the Move to Meaningful Internet Systems 2002: CoopIS, DOA, and ODBASE : Confederated International Conferences CoopIS, DOA, and ODBASE 2002, Springer Verlag, 2002, pp. 866–883.
- C. Lee and S. Helal: Protocols for Service Discovery in Dynamic and Mobile Networks, International Journal of Computer Research, Vol. 11, No. 1, pp. 1–12, Nova Science Publishers, 2002.