2012 年度がはじめてなので,すべての材料を独自に用意することはとてもできない. ぴったりの教科書があればそれをつかえばよいから,いろいろさがしてみたのだが,残念ながら既存の教科書には不満だらけだ (「世のネットワーク教科書への不満」 参照). しかたがないので,講義の材料を一番おおく提供してくれる本を教科書として指定して,ほかにも何冊か参考書を指定することにした.
コンピュータ・ネットワークに関しては大学向けの日本語の教科書もやまほど (数 10 冊) あるし,もちろん英語でかかれたものもいろいろある. 材料をとるのなら英語の教科書からでもよい. しかし,英語のもふくめて,材料としてはつかいにくい.
ネットワークの教科書のおおくは「階層」とか「OSI 参照モデル」とかにとらわれすぎていると感じている. その点で,そこからぬけだそうとしている Peterson & Davie の教科書に共感した. しかし,講義の材料としては図がほしい. おおくの教科書と同様に,この本にも図はすくない. だから材料はとりにくい. また,まえがきに書いてあるほど階層から自由になっているわけでもないようにみえる.
日本語の教科書はずいぶん,いろいろみた. 私のブログの 「書評: Web とインターネット アーカイブ」 のページには,みた本の "3 行書評" が書いてある. しかし,教科書としてつかえそうなものはほとんどない.
そのなかで,一番,材料を提供してくれそうなのは 井戸 伸彦 著 「新しい情報ネットワーク教科書」 だということになった. この本はイラストが多数ふくまれていて,それを講義で利用することができそうだからだ. それらは著者自身が書いたイラストのようであり,プロのイラストレータが書いたものとくらべるとごちゃごちゃしていて,みにくい. しかし,自分ではとても書けない量なので,不満はあってもこれをつかわせてもらうのがよいとかんがえた. 講義のストーリーはこの本とはちがうが,イラストだけコピーして学生にくばるわけにはいかないので,これを教科書として指定することにした.
「世のネットワーク教科書への不満」 に書いたように,たいていのコンピュータ・ネットワークの本にはネットワークのことがほとんど書いてないことが不満だ. それをおぎなうために,複雑ネットワークの本からも材料をとりいれようとした. 一部は参考書としてとりあげたが,読んだ本は 「人工知能・複雑系と人工生命 アーカイブ」 で紹介している. だが,残念ながらこの講義の主要部分とそれらの話題とのあいだにはかなりのギャップがあり,うめられないままになっている.
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