90 年代にはいくつかの会社がパソコンのために 3D 機能つきのサウンドシステムを開発しました. しかし,A3D という 3D サウンド API を開発した Aureal Semiconductor 社をはじめとして,そのおおくは解散するか,あるいは現在のこっていても規模はちいさいままです. ゲームなどで 3D グラフィクスはさかんにつかわれてきましたが,3D 音響はほとんど注目されないままです.
なぜそうなるのかというと,たぶん 3D グラフィクスが展開されるのがせまいディスプレイ画面上だからです. ディスプレイ上に表示された人や物体からの音がディスプレイ外からきこえるのは不自然です. また,ディスプレイ外からきこえるようにつくっても “腹話術効果” によって音がディスプレイ内にひきこまれてしまいます. したがって,3D 音響にコストをかけてもむだだといえるでしょう.
最近はやりの Second Life (セカンドライフ) についてもおなじことがいえるのではないかとおもわれます. Linden Lab (リンデン・ラボ) 社は Second Life に “3D ボイス” 機能をとりいれるとアナウンスしていますが,はたして成功するでしょうか? 3D ゲームとおなじ理由で,うまくいかないと予想することができます.
私が開発してきた voiscape は 3D 音響仮想空間をつくるコミュニケーション・メディアですが,これに ついてもおなじことがいえるとかんがえられます. voiscape の最初のプロトタイプでは 3D グラフィクスをつかっていましたが,つぎのプロトタイプをつくるときにそれをやめました. その理由は上記のとおりですが,しかし外の世界でおこっていることは制御できません. Linden Lab の Second Life が注目されているあいだは,voiscape をはやらせるのはむずかしいのではないかとおもっています.