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Second Life と voiscape との比較 ― 濱野 智史 の視点から

濱野 智史 は 「情報環境研究ノート」 というブログのなかで Linden Lab (リンデン・ラボ) の Second Life (セカンドライフ) についてつぎのように書いています (第11回 セカンドライフ考察編(4)).

Second Life は

1) 「真性同期型アーキテクチャ」 であるがゆえに,(非同期型に比べて相対的に) ユーザー間の非接触機会が高い,
2) セカンドライフの仮想空間 「メタバース」 は,「場所」 という概念はそこそこ 《現実的》 に設計されているのに対し,「距離」 の概念は 《非現実的》 に設計されている (= テレポーテーションができてしまう),
3) ひとつの 「島」 (プライベート SIM) に共在できるユーザー数が数十人程度に制限されている」

これらの点を voiscape (ヴォイスケープ) に関して検証してみようとおもいます.

1) について補足すると,濱野は 「セカンドライフの実態は 「閑散としている」 という認識がひろまっていることを指摘し,その原因は 「原因は、セカンドライフ上では,《一人のユーザーが必ず単一の 「場所」 にしか存在することができない》 という ―― ごくごく当たり前の ―― 事実に由来しています.」 と書いています. つまり,発言した内容がすべてのこるメディアとくらべると,「真性同期型」 においては発言はすぐにきえてしまって足跡がのこらないため,閑散とした印象をあたえるということでしょう.

2) に関して濱野はさらにつぎのようにも書いています.

『距離』 (ないしは 『移動』) という概念があまりに 《非現実的》 に ―― “SLurl” という独自のロケイターや、検索ボタン一発で 「テレポート」 することが可能なように ―― 実装されている」 (第10回 セカンドライフが 「閑散としている」 のはなぜか? 3)
これは,Second Life が 「サイバースペースの原理」 に部分的に反した,仮想世界としては未熟だということをしめしています.

voiscape も 「真性同期型アーキテクチャ」 であるがゆえに問題点 1) を共有しているとかんがえられます. つまり,ユーザは期待される場所にいないかもしれず,またどこにもいない,つまりオンラインでないかもしれません.

あまり本質的ではないかとおもいますが,関連する指摘をひとつ,かんたんにしておきます. voiscape においては壁の反射率をたかめることによって,音室のなかがよりにぎやかになります. これは,発言内容がただちにきえるのでなく,わずかな時間ですが,しばらく音室のなかにのこることによって,よりにぎやかな印象をあたえるということです. Second Life のばあいについてみると,発言者が移動したりオフラインになったりしても発言内容がしばらくその場にのこるようにすれば,よりにぎやかな印象をあたえることができるということになります.

問題点 2) に関しては,voiscape においてはできるだけ避けようとしています. つまり,「距離」 の概念をできるだけ 《現実的》 に設計しようとしています. (voiscape のプロトタイプには瞬時に壁まで移動する機能がくみこまれていますが,これは実験のためにいれたものであり,現在はなくすべき機能だとかんがえています.)

問題点 3) に関しては,voiscape においては Second Life における 「島」 に相当するのは音室 (へや) だとかんがえられますが,ひとつの音室にはいれるユーザの数はいまのところは 「島」 よりきびしくなっています. それは,voiscape においては処理のおもい 3D オーディオ機能がつねに使用されるのに対して,Second Life においてはそうではないからです. Second Life には最近 3D オーディオのサービスがとりいれられましたが,そうはいっても,おおくのユーザは 3D オーディオ機能をつかっていないので,サーバ負荷が voiscape よりかるいとかんがえられるからです.

このように Second Life と voiscape とではことなる点もありますが,それはむしろこまかいちがいであり,基本的には 「真性同期型アーキテクチャ」 であるために共通の性質をもっているとかんがえられます.

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