通常の使用法ではなにも問題がおこっていないデジタル音声再生機器をちょっとちがう方法でつかうと,急に音質が劣化したりすることがあります. 音声固有の問題ではなくてリアルタイム処理にはありがちなことだとはおもいますが,いわば 「デジタル音声再生はひとすじなわではいかない」 ということです. 私は USB ヘッドセットを VoIP 通信 (IP デジタル音声通信) でつかって,こういうことを経験しました.
ここ半年くらいのあいだに 3 件,研究会などで発表しました (信学会 コミュニケーションクオリティ研究会 2007-7, 信学会 応用音響研究会 2007-8, 信学会 通信ソサイエティ大会, 2007-7) が,その研究をしているときにおこったことです.
DR-260 USB というヘッドセットと voiscape のユーザエージェントとのくみあわせによって音質劣化が発生しました. きれいな音がでてしかるべきなのに,あきらかに,定期的に音のとぎれが発生しているのです. 劣化の原因は容易にわかりませんでしたが,やがてつぎのようなことに気づきました. RTP (Real-time Transport Protocol) パケットは 20 ms につき 1 個受信するのですが DR-260 USB からは 1.6 秒に 1 回ずつ 10 ms ピッチで (それ以外は 20 ms ピッチで) データが要求されます (わりこみがかかります). そのために受信側のプログラムにおいて音声データの不足がおこって,音質が低下していました. まったく予期していないことでした.
とりあえず (インチキな方法ですが) サーバからの RTP 送信ピッチを 19.753 ms にちぢめることによって音質を改善しました. すなわち,ファイルの再生速度をややはやめているわけです. 恒久的な対策が必要であればもうすこし気のきいた方法もあったとおもいますが,とりあえず実験をのりきるために,このような方法をとりました.