福島第一原発 1 ~ 6 号機のうち,3 号機だけは昨年から 「プルサーマル」 つまりプルトニウム 239 238 が燃料の一部 (548 本のうちの 32 本) としてつかわれているという (この燃料を MOX という).
プルトニウム 239 はもっとも毒性のつよい元素のひとつだといわれている.
そこで,これらをめぐる Web サイトをみてみた.
プルサーマルの危険について,「核情報: プルサーマルの危険性を警告する」 では 1999 年につぎのように指摘されている (エドウィン・S・ライマンの調査報告による).
MOX燃料を使用すると、日本の公衆に対するリスクが大幅に増大することをはっきりと示している。炉心の4分の1にMOXを装荷した場合、ウランだけの炉心の場合と比べ、重大事故から生じる潜在的ガン死は、42~122%*、急性死は10~98%*高くなる。(数値の幅は、アクチニドの放出割合の取り方による。)炉心全部をMOXとした場合、潜在ガン死の数は、161~386%*、急性死の数は、60~480%*高くなる。炉心に占めるMOXの割合と、放出されるアクチニドの割合により、原子力発電所の半径110キロメートル以内の地域で、何千、何万という数の潜在的ガン死が余分にもたらされることになる。この距離は、計算上の便宜のために選ばれたものであり、この地域の外でも影響が生じることはいうまでもない。
*つまり、MOX燃料が炉心に4分の1装荷されていた場合の潜在的ガン死は8,630人から70,700人。急性死は44人から827人。 MOX燃料が炉心全部に装荷されていたばあいはの潜在的ガン死は15,900人から155,000人。急性死は64人から2,420人
(注:これらの計算は、放出割合が、ウラン燃料の場合と、MOXの場合とで同じだとの想定の下に行われたものであり、事故から生じる影響の差は、炉内にある総量の差からのみくるものである。しかし、実際はそうではないかもしれない。たとえばフランスで行われたVERCOURSという実験では、燃焼度 47ギガワット日/トンのウラン燃料の燃料棒からのセシウムの放出の割合が18%でしかなかったのに対し、燃焼度41ギガワット日/トンのMOX燃料の燃料棒では、58%に達した。) [全体を引用したわけではないので,正確を期するにはもとの文章を参照ねがいます.]
また,西日本新聞の 「「放射能被害を過小評価」 ロシアの科学者 福島原発を懸念」 (3 月 27 日) によると,ロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士はつぎのようにいっているという.
福島第1はチェルノブイリより人口密集地に位置し、200キロの距離に人口3千万人の巨大首都圏がある。さらに、福島第1の3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電だ。もしここからプルトニウムが大量に放出される事態となれば、極めて甚大な被害が生じる。除去は不可能で、人が住めない土地が生まれる。それを大変懸念している。
そのため,博士は 「日本政府は、国民に対し放射能被害を過小評価している。」 といっているという. つまり,1 号機と 3 号機はいまのところ似た状況にあるようにみえるが,実際は 3 号機のほうがはるかに危険がたかいということだ.
東京電力はこれまでプルトニウムを計測する手段がなかったので,それを計測していなかったということだが,朝日新聞の 「プルトニウム漏れ調べる土壌調査開始 第一原発敷地内」 (3 月 27 日) によると,「枝野幸男官房長官は27日の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、原発敷地内の土壌に極めて毒性が強い放射性物質のプルトニウムが含まれていないか、調査を始めたことを明らかにした。」 という.
追記:
プルトニウム 239 238 による土壌汚染が非常に危険なものだとすると,おもいうかぶのは長崎だ.
長崎にはプルトニウム爆弾がおとされて,30 kg ちかくのプルトニウムがふりそそいだはずだ.
しかし,戦後それほどたたないうちに,プルトニウムが問題になることはなくなった.
なぜ長期の土壌汚染がおこらずにすんだのか.
また,仮にプルトニウムがもれたとしても,それよりはるかにすくないはずの福島では問題にならずにすむのではないか.
しかし,いずれも私にはわからない.
2011-4-16 追記:
すこしかんちがいしている部分があった.
原発からでる問題のプルトニウムはプルトニウム 238 だが,プルトニウム爆弾につかわれていたプルトニウムはプルトニウム 239 だという.
だから,直接比較するのは適切でなかった.
関連項目 (2011-3-28 追記):