照明器具には 2 種類のモジュラリティがもとめられている. ひとつは電源規格の面でのモジュラリティ,もうひとつは電源コネクタに関するモジュラリティだ. もとめられているのは白熱灯でも蛍光灯でも LED でもおなじだが,とくに LED に関しては白熱灯とおおきな事情のちがいがある.
天井の電灯のための壁スイッチのなかには,ホタルスイッチというネオン管を内蔵したものがある. これは LED とは相性がわるいのだが,なかなか改善されそうにない.
白熱灯や蛍光灯の場合には定電圧電源 (日本なら AC 100 V) を使用することにより,モジュラリティを確保している. すなわち,定電圧電源の器具は自由に追加したり削除したりすることができる. しかし,LED は DC 3 V 程度の電源で点灯するため,直接 AC 100 V につなぐことは通常はできず,モジュラリティを確保することがむずかしい. かんがえうるひとつの方法は定電流電源をうまくつかうことだ.
CAD をつかってランプシェードをデザインするとしたら,通常はその CAD に用意されたツールを駆使して自由にかたちをつくっていくだろう. しかし,私は「ランプシェードを構成するそれぞれの曲線はどこからくるのか?」 とかんがえてしまうので,こういうデザイン法はしっくりこない. いわゆるジェネラティブ・デザイン (generative design) においては,比較的単純なプログラムや数式から,もののかたちが生成される. かたちは単純な場合もあるが,複雑なかたちであっても,できるだけ単純なプログラムや数式からつくられるほうがよいとかんがえられる. 「偉大なものはすべて単純なり」という思想だ.
私が開発した螺旋走査線 3D 印刷の有力な応用は照明器具 (のシェード) だとかんがえている. それを実用化するには私だけではできないとかんがえているので,コラボレーションのかたちを模索している. すでに実現したのは中野ブロードウェイの 3D プリンタ屋を拠点にしたワークショップ中心のかたちと,デザイナーとのコラボレーションだ. 後者は closed なプロジェクトなのでこまかいことは書けないが,ここではコラボレーションのかたちをおおまかにまとめてみたい.
「照明器具のモジュラリティ」や「定電流電源によるモジュラーな LED 照明」という項目でモジュラーな LED 照明について考察したが,なぜ照明にモジュラリティが必要なのかを書かなかった. ながくつかわれる照明はそれがデザインされたときの必要をみたすだけでなく,その後の変化に対応できる必要があるからモジュラーであるべきなのだ.