この本の後半には本多勝一とイザヤ・ベンダさん (山本七平) の公開討論が収録されている. この本が出版されたときには,まだ本多のバカさ加減を見抜くことは難しかったのだろう. まだ文化大革命が続くなかで 「今の中国へ行く人が,予備知識として第一に何を勉強すべきたか考えたら [中略] まず 「階級」 とは何かを徹底的に知ることだと思います」 という主張に疑問をもつことはできなかっただろう. しかし,いくら当時でも 「私たちは,多少はスジの通った考え方のできる者であればだれでも知っている. 天皇制などというものは,シャーマニズムから来ている未開野蛮なしろものだということを」 という意見が妥当なものだったとはおもえない. 山本七平はこうした本多の主張にていねいに反論している. いまからみれば,どちらがただしかったかは,あきらかであろう.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 殺す側の論理@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)
最初の何章かは従軍慰安婦問題,東京裁判の問題など,すでにほかの論者によってさんざん書かれている内容である. そのなかには 「選挙コンプレックスがニクソンの生命取りになった」 (p. 113) というような,おもしろい話がちりばめてあったりはするものの,あまり新鮮さは感じられなかった. 3 章からは日本資本主義の分析など,小室らしい話題が登場するが,私にとってもっともインパクトがあったのは第 4 章 「なぜ,天皇は 「神」 となったのか」 である. 最近は教育勅語が現在でも有効な常識的な内容だとする意見が多くなっているが,小室によれば教育勅語はキリストのような現人神である天皇が儒教にはないまったく新しい規範を説いたものであるという. これぞ小室天皇教の真髄であり,逆にいえば教育勅語の “復活” に注意が必要だということでもある.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 日本国民に告ぐ@ , 日本国民に告ぐ@Amazon.co.jp.
8 月 12 日に NHK で 「鬼太郎が見た玉砕」 を見た. これは水木しげるの 「総員玉砕せよ!」 (集英社板,講談社文庫版) にもとづいていて,水木によれば,ラバウルでの体験を 「90 パーセント事実に基づいて」 書いているが,一部,脚色された部分がある. 水木の作品にはより経験に忠実に書いた 「水木しげるのラバウル戦記」 もある (Web 上の 「水木しげる伝」 にも同様の内容が書かれている).
すでに Web 上にいろいろな番組評,書評が書かれているが,そのおおくは戦争の悲惨さ,二等兵の悲哀などについて書かれている. しかし,私がもっともつよく印象づけられたのは,名誉のため玉砕を志向する大隊長とそれを避けて兵士たちをすくおうとする中隊長のはげしい対立,そして一時的にはすくわれた兵士たちが結局はメンツを重視する参謀によってふたたび玉砕をしいられるところだった. とくに,前者には 「武士道」 とのつながりを感じてしまう. この部分に注目している評がないことがむしろ,ふしぎである.
日本の歴史とくに大東亜戦争をみなおそうといううごきが,「新しい歴史教科書をつくる会」 をはじめとして,さかんになっています. みなおしを主張するひとたちが問題にする点のひとつは,「南京大虐殺」 をうつしたとされる写真のおおくが虚偽にみちたものだという点です. この戦争に関するおおくの本のなかでその真偽が議論されています. しかし私は,戦争とは直接の関係がない本のなかでこの問題に関連する記述があることを発見し,重要な論点を提供していると感じました. それは,今野 勉 の 「テレビの嘘を見破る」 という本です.
2007 年 8 月 12 日に NHK で放送された 「鬼太郎が見た玉砕」 というドラマの原作である. 戦争や死,病気などが日常化した戦場の世界がえがかれている. ドラマではより戦争の非情さが強調されていたようにおもうが,この本のなかに登場する人物たちはより人間的であるようにみえる. 玉砕するはずだったがいきのこった小隊長たちもドラマよりは温情的にあつかわれているようにみえる. しかし,それは著者のやさしさからでた表現なのかもしれない.
評価: ★★★☆☆
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WBS をのぞいては民放のテレビをほとんどみない私が,たまたま日本テレビの 「天才ダビンチ 伝説の巨大壁画発見 !」 なる番組を途中からみました. ゆくえ不明になっていた 「アンギアリの戦い」 (Battaglia di Anghiari) という作品が,実はベッキオ宮にあるヴァザーリ (Giorgio Vasari) の絵の裏にかくされていることをマウリツィオ・セラセチーニ (Maurizio Seracini) という研究者が発見した,そのヒントになったのは彼がヴァザーリの絵にあるのを発見した cerca trova (さがせばみつかる) というとばだったということです. この作品は戦争の残虐さをえがいた絵だということです. ここからさきは私の想像ですが,ダビンチ (Leonardo da Vinci) ほどの大芸術家の絵ではあっても,このような絵はその場にふさわしくないとかんがえられて,完成されるまえに封印されてしまったということではないでしょうか.
中国は南京事件で 30 万人が虐殺されたと主張しています. この数字が非常にうたがわしいことは,おおくのひとが指摘しています. 30 万人という数が捏造されたのには,日本軍を糾弾するためにそういうおおきな数字が必要だったからではないかとかんがえられます. つまり,先日の四川省の大地震でも死者数が 3 万人をこえるのではないかといわれていますが,中国では数万人にのぼる死者数をだすことがしばしばあります. インパクトをあたえるにはすくなくとも 10 万をこえる数字が必要だったのではないでしょうか? これは,おなじ数字をだしても日本人と中国人とでは,うけとりかたがちがうということを意味しています.
戦争ビジネスに関する本としては,戦争請負企業を中心としたものから個人の体験を書いたものまであるが,この本は両方をカバーしようとしている. 日本人がこの問題に興味をもつようになったきっかけはイラクで戦死した斉藤さんのニュースだったが,そこからはじめて,部隊の劣悪な環境,古代からはじまる歴史,アフリカやアジアの紛争地でのできごとなど,戦争ビジネスを概観するには適当な本だろう. 太平洋戦争やベトナム戦争に関しても,あまり知られていないエピソードがふくまれていて,興味ぶかい.
評価: ★★★☆☆
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11 の章からなる本だが,各章は独立の論文であり,タイトルの 「民営化される戦争」 に関する章はおおくはない. 議論はあまりていねいとはいえず,裏付けが書かれていない記述もおおい. MPRI という戦争請負企業に関しては,クロアチアでセルビア人を 10 万人も殺害してしまったという噂も書かれている. 「噂」 と書いてあるからよいようなものだが,論旨が噂に影響されるのはどうかとおもう.
評価: ★★☆☆☆
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太平洋戦争によって日本はアメリカにひどくいためつけられた. しかし,そのアメリカが戦後たたかってきたソ連の脅威を,戦前にただしく把握し,たたかったきたのは日本である. 当時それをアメリカがただしく認識していなかったことが太平洋戦争をまねいた原因のひとつなのではないだろうか?
著者は 1939 年の極東を取材し,日本,韓国,「満州国」,中国の様子をえがいている. 著者は 「「東亜新秩序」という日本の目標を単に軍事的にのみ費用化するならば,日本の目標をまったく誤解し,過小評価することになる」 というように,日本の政策を評価している. そして,日本人が朝鮮人の生活水準を向上させ 「多くを成し遂げた」 こと,また 「満州国」 において,工業的におどろくべき発展をみたことなど,日本の支配下でこれらの地域が発展したことを指摘している. また,「満州国」 の首都である新京において,満州の潤沢な資源をつかうことによって,日本がギリシャ風,中国風,西洋風など,さまざまな様式の建築をたてていることをいささかの建築の知識をもって語っている.
しかし,こうした日本の 「功」 についてのべるだけでなく,「罪」 の部分についても,するどく書いている. 著者自身が国民党政府がある重慶において日本軍による爆撃でひどいめにあわされているが,重慶市民がさんざんな目にあわされてきたことをえがいている. また,「日本人は何事も決定できず常にすべてをしかも同時に望んでいる [中略] こうした欠点があるがために,終局的に成果をあげつつ日中戦争を終らせることにこれまで失敗してきた」,「日本の経済危機の本来の理由は,日本人がもろもろの根本的決意,決定を,最後の瞬間まで回避していることである」,「日本人はまったく宣伝が下手であり,たとえ彼らに言い分があっても,全世界は信じようとしない」 ことなど,日本人の資質についても,するどく分析している.
ほかにも,イギリスについては中国において失策をおかしたことや日本をあなどっていたこと,中国については 「以前は,中国はひとつの国土であると解釈されていたが,今日では大陸の意味に用いられている [つまり,中華民国政府が支配しているのでないこと]」,日本がヨーロッパの文化をうまく日本の伝統と調和させたのに対して,孫文や蒋介石がそれを無条件に導入しようとした [ために失敗した] ことを指摘している.
この本は,日本や中国,韓国などの歴史を再評価するうえで貴重な資料であるとともに,現在の日本人や日本の政治の弱点にもつながる指摘は今後の日本に関しても指針をあたえてくれるだろう.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 日中戦争見聞記@ ,日中戦争見聞記@Amazon.co.jp.
「諸君!」 12 月号の 渡部 昇一 著 「まやかしの 「A 級戦犯・分祀論」 に終止符を打て」 には 「東京裁判の判決 (judgement) にしたがう」 ことと 「東京裁判 (tribunal / court) にしたがう」 ことが混同されていることの重大性が指摘されている. 戦争に負けた以上は判決にはしたがわざるをえないが,裁判そのものをみとめるべきでないということだ. しかし,なぜ裁判と判決とが混同されてしまうのだろうか?
日本ではかつて,国内の不満のはけぐちとして朝鮮などへの戦争がかんがえられてきた. 明治時代の朝鮮出兵がその代表といえるだろう. 現在でも,なかなか仕事につくことができないフリーターやニートなどの若者のなかには,戦争 (内戦?) がその解決策になるとかんがえるものがいる. しかし,現在,大多数の日本人は戦争をのぞんではいない. 太平洋戦争の反省にもとづく反戦論・非戦論はこうした好戦論よりはるかにつよい. しかし,今後もそうであるつづけるといえるのだろうか?
ウィーンフィルのニューイヤー・コンサートは毎年,世界中に中継されている. 今年の指揮者バレンボイムは恒例のあいさつのなかに,中東の平和をのぞむみじかいメッセージをこめていた. イスラエルとガザで毎日多数の死傷者がでる状態がつづいているが,その切実なメッセージは,とくに日本の聴取者にどれだけつたわったのだろうか?
最近は宗教とのかかわりは希薄になってしまった. しかし,私がこどものころは,もうすこし宗教とくに立正佼成会とのかかわりがあった. 学生のころから立正佼成会が世界平和に貢献しようとしていることは知っていたが,イスラム教世界とキリスト教世界が対立するなかで,仏教者がはたせるやくわりは,いまもあるものとおもう.
2 年ほど前にグアムに行った. 本書でも紹介されているモール内の博物館には行ったが,ガイドブックにも書いてないので,グアムの歴史につながる他の場所には行かなかった. それは,うすっぺらな旅行だったようにおもう. 本書はそういう 「かくされた場所」 をみせてくれる. レジャーをたのしむ日本人は知りたいとおもわないことかもしれない. しかし,現在のグアムの問題点までカバーしている本書は,グアムを観光するときにも 「厚み」 をあたえてくれるのではないだろうか.
評価: ★★★☆☆
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最近没した加藤周一を (サヨク中心に ?) たかく評価するひとがおおいので,あらためてその著書を読んでみようとおもった. 20 世紀は最後の何年かをのぞけば社会主義と資本主義との対立の時代だった. だから,「20 世紀」 をタイトルにかかげる本書が社会主義を最大のテーマとしているのは当然のことだろう. アメリカ中心の新自由主義がくずれたいま,もう一度,社会(民主)主義をみなおす必要があり,この本もそれにやくだつかもしれない.
しかし,この本で議論されているのは理念であって,現実の経済や社会をよくみていない. 著者が太平洋戦争に反対してきたのは 「実際の情報に通じていたからではなく,[中略] 価値判断であって,これは事実判断ではなかった」 という. 事実を把握できない状態では事実にもとづかない価値判断をせざるをえなかったということであって,やむをえないことだったのであろう. しかし,著者は現代のできごとについても,知ることができるはずの事実をみないまま価値判断をしているようにみえる. とくに,20 世紀は経済の時代でもあり情報化の時代でもあったのに,それらにほとんどふれないままになっているので,「私にとっての 20 世紀」 ではあっても,「みんなにとっての 20 世紀」 にはなりえないだろう.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 私にとっての20世紀@ ,私にとっての20世紀@Amazon.co.jp.
東京大空襲よりまえ,ゲルニカ空襲の直後に日本軍による重慶の無差別爆撃が 3 年間にわたって,おこなわれた. 明白な国際法違反だったにもかかわらず現代日本でそれが知られていないひとつの理由は,アメリカが東京裁判でとりあげるのをのぞまなかったからだという. 南京虐殺を議論するのもよいが,日中戦争にはほかにも重大な問題があったことを,この本はおしえてくれる. 重慶爆撃はその後の対米戦争にも影響をあたえているだろうし,なによりも,この問題にふたをしたままでは真の日中友好はありえないようにおもえる.
評価: ★★★★★
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重慶爆撃は日中戦争の重要な部分であるにもかかわらず,あまりとりあげられることがない. 書籍としては 「重慶爆撃とは何だったのか」 のほうが手ごろだが,そこからはわからないさまざまな点がこの本によってあきらかにされる. この日本軍による執拗な無差別爆撃によって重慶やその市民がどういう被害をうけたかはもちろんのこと,ゲルニカにはじまり東京大空襲や広島・長崎につづいていく無差別爆撃のなかでの重慶爆撃の位置づけや,現在も尾をひいている中国人の対日感情,日米戦争への影響なども論じられている.
2 段組で 640 ページにわたってぎっしりと書かれた本ではあり資料価値はたかい. しかし,ひとつ不満があるのは,ほとんど個別的な情報が収集されているだけで,統計がわずかしか書かれていないことである. 過去の一地域に関する統計をあつめるのは困難だろうが,もうすこし情報をあつめることはできなかったのだろうかとおもう. 「重慶爆撃とは何だったのか」 にはいくつかの統計がふくまれているので,補足することができる.
評価: ★★★★☆
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第一次世界大戦以来の無差別爆撃の歴史を欧米中心にえがいている. 第一次大戦におけるドイツとイギリスの爆撃合戦に端を発し,イギリスでそだてられた無差別爆撃の思想がやがてアメリカにもひきつがれ,東京大空襲や広島・長崎につづいていく.
日本も重慶などへの無差別爆撃を長期間おこなったことが知られていて,この本でも 「はじめに」 でそのことにふれられているが,あつかいはちいさい. 日本を加害者としてよりは被害者としてみている点で,従来の戦争史と同様である. 無差別爆撃被害者としての日本をおおきくとりあげている以上は,加害者としての面についてももうすこしページをさくのでなければ,バランスがとれた記述にならないとおもえる.
評価: ★★★☆☆
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タイトルだけでなく内容においてもいわゆる 「村山談話」 にこだわりがあるが,「村山談話」 についての本というよりは,村山 富市 というひとがどういう政治家だったのかをあきらかにしてくれる本といえるだろう.
総理大臣になるとはまったくかんがえられていなかったひとが総理大臣になり,後藤田正晴によれば 「保革の対立の中でやらなければならないけれどできなかった仕事 [中略] がある内閣のときに解決したんです」 というだけの仕事をした. しかし,この本を読んでもやはり一方では総理になるはずでなかったひとがなったことによる限界も感じとれる. 「村山談話」 もそのどちらであったのかは,ひとによって評価がわれるということなのだろう.
評価: ★★★☆☆
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歴史上の国や地域の状況を想像することは,すくなくとも私にとっては現在の国や地域を想像することよりむずかしい. だから,大東亜戦争当時の中国の状況を現在のアフガニスタンの状況とくらべて理解するようにこころみてみよう.
日本人は 「終戦」 というできごとを日本だけのこととしてうけとってしまう. それによって 「大日本帝国」 が崩壊し,東アジア全体が影響をうけたことをわすれてしまっている. 著者は 「大日本帝国」 が影響をあたえていた南太平洋からタイ,インドにいたる東アジア全体がその崩壊によってどういう影響をうけたのかを分析しようとしている.
そこまでかんがえるのが,「大東亜共栄圏」 をうたっていた日本人がこの戦争を反省するうえで必要なことなのだろう. 著者の分析は十分とはいえないが,結論は 「大日本帝国の誕生から崩壊まで,ほとんどの日本人は日本人による日本人だけの帝国という意識を捨てきれなかったのである」 ということだ. 多民族国家だった 「大日本帝国」 にふさわしい体制をつくれなかったことがおおきな敗因だといえるのではないだろうか.
評価: ★★★★☆
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著者は対象から昭和にかけて大連にくらし,日中戦争当時は内地でくらしていたものの,大連訪問時のようすも書いている. ときにはおもいをこめながらも,戦争や殺人事件などをふくむさまざまなエピソードを淡々と書いている. 大連のたべものやコンサートの話題もあって,興味をひかれる.
評価: ★★★☆☆
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NHK の 「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」 第 1 回をみた. これを政府要人や民主党議員にみてほしいとおもう. なぜか? それは,政府内がバラバラだったことが外国の不信をまねき,それが戦争への道につながったという主張をしているからだ. 政府内・党内がバラバラであること,それが現在の民主党政権の現状であり,日本の危機を助長している.
太平洋戦争末期には配給も激減してまともなものがたべられなくなったことは,以前からいわれているとおりだ. おもしろいのは戦時下でももっと余裕があったころだ. もともとゆたかではなかった一般国民の食卓に 「代用食」 なるものがはいってきて,むしろたべものの幅をひろげているようにもみえる. とはいえ,婦人雑誌のレシピは国民がほんとうにたべていたものとはちがうから,そこはくべつするべきなのだろう.
評価: ★★★☆☆
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著者は若者が日本に誇りをもてないおおきな原因を東京裁判とそれにもとづく歴史教育にみている. だから,この本の大半の部分は著者がただしいとかんがえる戦前の歴史の記述にあてている. 「南京大虐殺」 の否定がおおきなポイントになっているが,すべてを日本に有利に解釈しているわけではない. 日本の国際連盟脱退に関しては,リットン調査団報告書の内容が妥当であるにもかかわらず,脱退したのはまちがいだったと書いている.
東京裁判や 「南京大虐殺」 などに関する議論の成果をとりいれて公正な判断をしようとしているところは評価できるが,まだ根拠が不十分な記述もところどころにみられる. 読者は注意ぶかく読むべきだろう. しかし,あやまりをただすのは歴史の専門家でない著者ではなくて,歴史家がはたすべきやくわりだろう.
評価: ★★★★☆
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3 月 16 日に 吉本 隆明 が死んだ. なまえは知っていたが,いままで著書を読んだことはなかったし,吉本が書くような雑誌はめったに読まないので,文章を読んだこともほとんどなかった. しかし,これを機に何冊か読んでみて,これまでかんがえていたのとはだいぶちがう印象をもった.
この本の内容はおもに小林よしのりの 「戦争論」 に対する批判だが,小林よしのりや新しい歴史教科書をつくる会に対する批判だけでなく,戦後民主主義や共産党もあわせて批判している. 「従軍慰安婦」 に関しては日本が謝罪し賠償すべきだといっているが,それに関しては十分に納得できる理由がしめされているとはいえない. 憲法 9 条に関しては護憲派であり,それをなしくずしにした 吉田 茂 を批判している. 日航機ハイジャックで福田首相が 「生命は地球よりも重い」 といって人質を解放したことを 「自民党のやった 「一番いいこと」」 だといっているが,これは理解できない.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 私の「戦争論」 (文庫)@ , 私の「戦争論」@ , 私の「戦争論」 (文庫)@Amazon.co.jp, 私の「戦争論」@Amazon.co.jp.
「はだしのゲン」 というマンガが松江市教育委員会によって閲覧制限されていたのが撤回された. 教育委員会が介入するのは不適切であり,制限が撤回されたことは適切だとかんがえられる. しかし,このマンガにある残虐性よりも,その残虐な場面にある自虐性のほうが問題だとおもえる.
いいたいことがいえない息苦しい雰囲気がひろがっているようにおもえてならない. 若者のあいだにもある「空気」にさからえないこともそのひとつだが,「表現の不自由展」の中止からもそれが感じられる. それは戦前の日本をおおっていた雰囲気にちかいものであるようにおもえる. 山本七平が「空気の研究」という本を書いているが,戦前からあった「空気にさからえない」日本人の特質はいまの若いひとでも,すこしもかわっていないようにおもえる. 反戦のために自民党政権を批判するひとはおおいが,本当に問題なのは現在や過去の政府でも陸軍でもなく,「空気」にのまれる国民であり,「空気」にのまれずに冷静に判断できること,「空気」に抗することができることが重要だとおもえる.
昭和天皇は戦後,敗戦にいたる経緯をふりかえって後悔・反省の念をかたっていたという. NHK では「拝謁記」なる記録を入手し,その内容の一部を放送している. しかし,「後悔」というのは自分ができたはずのことをしなかった,あるいはしないほうがよかったことをしてしまったということであり,昭和天皇にはあてはまらないのではないかとおもう.昭和天皇も「国民も反省すべき」と語ったというが,天皇主権の憲法のもととはいえ,陸軍をちからづけたのは国民の賛意であり,それこそが第一に反省するべきことだとおもえる.
プーチンがはじめたウクライナ侵略戦争は,ウクライナ軍をアメリカや EU 諸国の軍事援助するだけでなく,欧米をはじめとする多くの国を巻きこんだ強力な経済制裁につながっている. ウクライナでの民間人に対する非人道的な行為すなわち戦争犯罪によって,これらの国はロシアが屈服するまでこの「経済兵器」を継続・強化する方向になっているようにみえる. また,サイバー攻撃や SNS などもロシアに対する軍事攻撃にかわる「兵器」としてつかわれている. これはすでに第 3 次世界大戦と呼んでよい状態になっているのではないか?
ナイチンゲールがクリミア戦争の傷病兵のための病院の衛生状態を改善するために統計学を駆使して本国であるイギリスにアピールしたことが知られているが,統計のビジュアル化によってそれを成功にみちびいたということをきょう,はじめて知った.
第 1 次世界大戦も,第 2 次世界大戦も,それがはじまったときにはまだ世界大戦になるとはかんがえられていなかっただろう. おおくの国がそこにまきこまれていって,気づいたときには世界大戦になっているのだ. いままさにウクライナを中心として第 3 次世界大戦がはじまってしまったとおもうのだが,まだそういう認識はひろがっていないようだ.
ロシアのウクライナ侵略ではじまった戦争にアメリカをはじめとする NATO 各国は兵器の供与や経済制裁というかたちで参戦している. 日本は憲法上,兵器を供与することはできないが,経済制裁に参加し,防衛装備品を供与している. つまり,「連合国」の一員となってこの「第 3 次世界大戦」に参戦しているということだとおもう. それは,違憲にならないかたちで戦争の放棄を放棄したということだとおもえる.
ハマス殲滅をかかげたイスラエルの狂気のガザ攻撃に関して,なにかしなければというおもいがつよくなって,X に投稿した. しかし,どれだけのひとにつたわるか,わからない. 自分で検索してもみつからないから…
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