Twitter (ツイッター) などをみていると,あいかわらず,菅首相や谷垣自民党総裁など,政治家のひとことに対して攻撃するコメントがたえない. 単なる憂さばらしならそれもいいかもしれないが,東日本大震災で政治家にも最大限のちからをだしてもらわなければならないときに,それをそぐような攻撃はぜひやめてほしいとおもう.
首相官邸の 「ご意見募集」 につぎのようなメッセージをおくりました.
マスコミや Twitter やそのほかのメディアでみるかぎり,政府や民主党,自民党の決定やメッセージに対しては批判ばかりがめだつようにおもいます. しかし,枝野官房長官をはじめ,みなさんが地震発生以来,最大限の努力をしていることはあきらかだとおもいます. 未曾有の事態のため判断をあやまることもあるとはおもいますが,みなさんの努力に対して最大限の敬意をあらわすとともに,これからも最大限の努力をすることに期待しています. 私自身も,すでに募金はしましたが,今後さらに被災者に対してできるだけのことをしたいとかんがえています.
Capote による 「枝野官房長官から学べる 10 のこと: 危機管理広報の視点から」 を読んで,これはすばらしい分析であり,たしかにそこからまなぶべきだと感じました. リンクをはるだけでなく,引用させていただきます.
政府は法人税を 5% 減税する予定だった. しかし,震災対策への支出が大幅にふえるいま,減税するべきでない. 一段落するまで減税は延期するべきだろう.
WiLL 2011 年 5 月号では,震災直後の時点でいろいろなひとがこの大震災について書いている. そのなかには,被災者救援と復興にむけて,まえむきな議論をし,共感するべき点がすくなくない文章もある. その一方で,菅首相や蓮舫大臣の足をひっぱるだけでなく,罵詈雑言をあびせる文章や対談もすくなくない. ふだんならそれもよいだろうが,こんな事態のなかで,建設的な批判ではなく,震災対策をじゃまするような議論をするのは非常識としかおもえない.
菅首相は 3 月に自民党の谷垣総裁に入閣を打診した. 唐突だったため即座にことわられたが,最近また大連立にむけたうごきがでている. 震災対策にしろ,それ以前からある年金や税体系改革やその他の案件にしろ,民主党だけで大改革をなしとげることはむずかしいだろう. 自民党が政権をとったとしても,おなじだ. 震災を機に大連立を組んで,これらの課題にとりくむのがよいのではないだろうか.
東日本大震災の発生後,それを理由に事業仕分けでスーパー堤防予算がカットされたことを批判するひとびとがいる. しかし,200 年に一度の災害のために莫大な予算をかけて自然を打ち負かそうという発想じたいが,あらためられるべきだろう. 人間にできることはかぎられている. もっと自然と調和する,しなやかな方法をさがすべきだろう.
石原都知事が自動販売機とパチンコ屋をめがたきにする発言をしている. これらにほかよりつよい使用電力規制をかけるというのはありうることだとおもうが,この発言にいきおいづけられて自動販売機やパチンコ屋の営業を禁止するというのは,これらをスケープゴートにする危険なかんがえだ. 太平洋戦争中をおもいださせるような,こういう議論にのせられないように気をつけるべきだろう.
西岡武夫参院議長が菅内閣をたびたび強烈に批判している. 産経ニュースなどでそのいいぶんを読んでみると,はやく法律をつくってそれにもとづいて震災復興をすすめるべきだというかんがえのようだ. 菅内閣はむしろ立法に時間がかかることをかんがえると,あたらしい法律をつくらずに対処していく方針にみえる. 国会において法律が迅速に成立する状況であれば西岡氏のやりかたがよいだろうが,まさに参議院がその障害になることをかんがえれば,西岡氏の案は適切でないだろう. もともと民主党に所属していながら民主党政権を混乱させ,復興そのものも混乱させかねない西岡氏はだまるべきだ.
菅直人を首相の座からひきずりおろそうといううごきが,野党だけでなく民主党のなかからもでているようだ. しかし,民主党のなかに彼にかわって首相になれるひと,彼よりうまくやれるひとがいるのだろうか.
たしかに,自民党のしかるべきひとであれば,菅直人より震災対策をうまくやることができるだろう. だが,そうすることが民主党のチャレンジをやめさせ,ずっとめざしてきた 2 大政党制への道をとざすことになるとしたら,それが日本のすすむべき道だろうか. いまは震災復旧だけをかんがえるときではなく,日本全体の復興のみちすじをかんがえるべきときだ.
私は基本的には菅首相を支持する立場だ. 菅内閣の支持率が 10% をわりこんだとしても,それはかわらないだろう. 菅内閣がいろいろ失策をおかしてきたのは事実だが,それにはやむをえない部分があるとおもう. しかし,それでもやはり納得できない部分はある. それは,彼が日本をどちらにつれていこうとしているのか,方針があきらかでないことだ. たとえば,原発をどうするのか,自然エネルギーをどうするのかといったことがらに関する方針があきらかにされないまま,ある日突然,浜岡原発の停止要請がでたり,サミットでの演説がでてきたりする. これらの決定そのものは支持するし決定にいたった必然性があるとおもうが,それがあらかじめ方針としてしめされていないことには,やはり不満がある.
私は 「菅内閣の最大の問題点は方針が明確にされないことだ」 と不満を感じつつも,「震災復旧だけでなく日本の復興までかんがえれば菅内閣をささえる必要があるのではないか」 とかんがえてきた. しかし,ここ数日の茶番劇は予想外だった. 辞任をみずから口にした以上は,半年以上も続投するということはありえないだろう. しかも,この茶番劇で一番,信用をうしなったのは菅首相自身だ. それがなければ 2 ヶ月くらい続投することもありえただろうが,もはや,すみやかに辞任するほかはないだろう.
首相官邸の 「ご意見募集」 につぎのようなメッセージをおくりました.
数日前までは菅首相が当分,続投することが震災復旧・復興のためにはよいものとかんがえていました. しかし,首相はみずから辞任を口にせざるを得ないところまで,追いこまれました. それでも,復興構想会議の成果を政策にいかすために,まだ 2 ヶ月くらいは続投されるものとかんがえていました.
ところが,来年はじめまで続投される意思があるようにうかがいました. 辞任を口にされた以上,それはありえないことだとおもいます. それによって民主党内だけでなく国民の信頼もこれまで以上にうしなったものとおもいます. もはや,6 月末までといわず,一刻もはやく辞任されるのが,政治を混乱させず,被災地の復旧や日本の復興をすすめるためにもよいものとおもいます.
日本では首相がめまぐるしく,かわっていく. 首相の支持率は短期的にあがることはあっても,長期的にはずるずるとさがっていく. こうなってしまうのは,国のリーダーになる訓練ができていないからではないだろうか. 国会議員や大臣としての経験だけでは首相となるには十分ではないだろう. 首相になるために必要な訓練をシステマティックにする必要があるのではないだろうか.
東日本大震災発生以降,それまでも菅首相や政権を批判していた新聞や国会議員などは,さらに批判をつよめている. その理由は会議を乱立させたことや原発事故への対応をはじめ,さまざまだ. 計画停電への対応もそのひとつだ. 政権がさきまわりしてうまく対応していれば,計画停電がさけられたり,影響を最小限にすることができていたとしても,はたしてそうするのがよいことだっただろうか. それが実施され,関東地方の住民におおきな影響をあたえたことが,むしろ住民あるいは国民に事態の深刻さや対策の必要性を学習させたのではないだろうか.
菅内閣が最近うちだす政策は唐突な印象をあたえる. 浜岡原発の停止要請もそうだし,サミットに行った際の OECD の演説では自然エネルギー比率を 20% にするという「公約」をしたという. 震災の直後には計画停電をうけて節電をよびかけたが,政府がすばやいうごきをすれば計画停電はさけられたのではないかという指摘もある. 計画停電をさける対応をとらず浜岡原発を停止させて電力をさらに逼迫させる,それは危機を演出してエネルギー政策の改革を成功させようということなのではないか?
東日本大震災復興構想会議が提言をまとめて内閣に提出した. 十分な議論がおこなわれたとはいえないだろうが,3 カ月強のあいだに本会議は 12 回,作業部会は 8 回の会議をかさねて,えられた結論だ. 回数はおおいとはいえないが,ときには 4 時間以上の時間をかけて議論している. 提言の内容をみると,その議論の結果が十分に反映されているようにはみえず,ほとんど抽象的な内容に終始している,あるいは意図的にぼかされているようにみえる. 復興への道は地域ごとにおおきくちがっているはずなのに,提言ではいくつかの類型をしめしているだけだ. しかも,提言にもりこまれたかぎられた内容も,たとえば増税や特区の設置に関してはすでに反対のこえがあがっている. この会議の成果を復興にいかしていくには,どうすればよいのだろうか?
東日本大震災復興構想会議が 6 月 25 日に提言をまとめた. そこで議論されてきた重要な内容はすべてとりこまれたということで,委員である宮城県知事も満足している様子だ. しかし,「具体的な内容がもりこまれなかった復興構想会議の提言」 に書いたように,その内容は具体性にとぼしい. 内容を具体的にうらづけるのは検討部会の仕事のはずだが,そのうごきがよくみえない. 検討部会がうまく機能していなかったから,提言に具体性がないままになったのではないだろうか.
6 月 21 日に東日本大震災復興基本法が国会で成立した. 24 日に公布されたはずだ. この法律の内容はどこに書いてあるのか? Google でさがしても容易にみつからなかった. こういう重要な法律の内容がすぐにしらべられないのは,おかしいのではないか.
東北の復興そして日本の復興がかかっているだいじなときに,政治家たちは目先のことであらそっているといわれている. 復興のために,原発や自衛隊など,現場のひとたちが最大限の努力をはらっているときに,政治家は無能ぶりを発揮しているともいわれる. だが,もうすこしながい目でみるとき,復興をおくらせる要因は政局や政治家の無能ではなくて,日本の針路に関する対立なのではないかとおもえる. 「復興の精神」 という共著本を読み,東京脱出に関するかんがえかたのちがいをみるにつけて,いまや,あらゆる点で国民のなかに対立があり,それを解消することの必要性と困難とを感じざるをえない.
菅政権は浜岡原発停止を要請したあと,ほかの原発に関してはこれまでどおりのあつかいを継続する方針をきめた. その方針にしたがって,いったんは玄海原発の再稼働をみとめることにして,地元もそれにしたがって再稼働をみとめる方向になった. ところが,菅首相は突然,再稼働のまえにストレステストをおこなう方針をうちだした. これではこの夏とつぎの冬の電力を確保することがむずかしいといって批判されている.
たしかに,唐突にストレステストの実施がうちだされるのはおかしい. しかし,福島第一原発の事故があったにもかかわらず見直しをしないまま原発の再稼働をみとめることにむしろ疑問がある. ストレステストの導入はむしろ,“原発推進” にブレていた政策を本来の方向にもどしたということであり,適切な変更だといってよいだろう.
震災以来,著者は震災について,福島について発言し,復興構想会議委員もつとめてきた. その著者が地震以来の経験や構想会議での主張やその結果などを書いたのがこの本だ. 著者は福島第一原発の 50 km 圏内に住んでいるというが,地震そのものの影響は比較的すくなく,津波の影響もない地域だ. 震災を東京圏でむかえた私とも,それほどかけはなれた経験をしたわけではないようだ. そういう著者のかんがえや感じかたに,読者は共感できるかもしれない.
評価: ★★★☆☆
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震災復興に 20 兆円くらいかかるというのは大嘘で,実は被害は 5 兆円程度だと著者は主張する. 復興のためと称して過大なインフラをつくるべきではない. しかし,この差はおもに,(復旧でなく) 復興に必要な全額をみつもった金額か,減価した資産の震災時の評価金額かというところからきているのだろう. この差額をだれがどういうふうに負担するべきなのか? すべてを被災者や被災地の自治体に負担させるというのは非現実的だろう. しかし,すべてを返済不要のものとして国民全体で負担するのが適切だと自信をもっていえるだろうか. とくに,もしそれが景気を悪化させるとしたら… だから,著者の主張も疑問は多々あるが読むに値するものだといえるだろう.
評価: ★★★☆☆
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関東大震災と東日本大震災のときの政治状況の比較がこの本の中心テーマになっている. とくに東日本大震災のときの政治家については,ことばをきわめて批判している. しかし,それではそのとき政治家がどうすればよかったのかについてはそれほど明確なことを書いてはいない. それは関東大震災についてもおなじだ.
震災後の政治状況を分析するのは必要なことであり,著者の努力は貴重なものだとおもう. しかし,80 年を経てもなお正解がわからないのに,なぜ正解をみつけられない現代の政治家をこれほどつよく罵倒できるのか,理解できない. 政治家がちからをだすべきときに,そのちからをそいでいるのは,こういうジャーナリストなのではないだろうか.
評価: ★★☆☆☆
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震災発生時にたまたま石巻にいた官僚の著者は,中央にもどらずそのまま 50 日間石巻でできる限りのことをして,そのレポートを霞ヶ関におくりつづける. それをもとに書かれたのが本書だ. 市役所の混乱した状況や役人たちの対応などが冷静にえがかれている. 興味ぶかく読むことができ,また貴重な資料でもある.
評価: ★★★★☆
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「著者」 の 6 人との対話にもとづいている. 6 人のなかには民主党,自民党,みんなの党の政治家もふくまれている. それぞれ立場がことなる政治家との対話をいわば無難にこなしているが,対立点はどこへいってしまったのだろうか? 「著者」 のかんがえはいったいどこにあるのだろう.
評価: ★★☆☆☆
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新型コロナウイルス (COVID-19) に関する状況は急激に変化しているし,それに対応した新聞記事や SNS の情報もどんどん更新されている. しかし,いずれもログであって,ふるい記事のうえに少数のあたらしい記事がつみかさなっているだけなので,見返すとふるい記事のほうがめだつ. それによって世論はふるい状況に影響され,政府や自治体のあらたな対応への批判につながっているのではないだろうか?
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