ネットに対して悲観的にすぎる議論 ― 中川 淳一郎 著, 「ウェブはバカと暇人のもの」
著者がいうには,ネットでは 「バカ [= モンスター ?!] と暇人」 によって,ちょっとしたことで炎上がおこるから,自由には書けない. それはそうだが,モンスターがいるのはネットだけではなくて,患者や児童・生徒の親や,そのほかいろいろなところにいる. だが,もの書きにとっては新聞・雑誌などの従来のメディアでは彼らが著者を直接攻撃できないように保護されているのに対して,ネットでは彼らを直接相手にしなければならないということだろう. だから 「ネガティブな書き込みをスルーする耐性が必要」 と著者も書いているが,なかなか実際にはそうはいかず,サイトを閉鎖したりするハメになる.
ネットに期待をもてない著者は 「ネットでバカなこと,B 級なことができないのであれば,ネットでは最低限の情報公開を除き,何もすべきではない」 とまで書いている. しかし,かきこみの量では 「バカと暇人」 に勝てないものの,従来のメディアには書けないか書きにくいことに関する賢い読み手やコメンターもいるのだ. 何もしなければ,そういうひとたちとめぐりあうこともできない. ネットに対してあまりに悲観的なこの議論に同意することはできない.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: ウェブはバカと暇人のもの@ ,ウェブはバカと暇人のもの@Amazon.co.jp.