説明員をつとめるためにいった Interop Tokyo 2010 は DSJ (Digital Signage Japan) という展示会と同時開催されていた. この展示会をみて,ふりかえってみると,身のまわりにはふしぎなデジタル・サイネージであふれている. そのふしぎなデジタル・サイネージたちについて書いてみよう.
デジタル・サイネージでは縦長画面がはばをきかせている. これが第 1 のふしぎだ. 本のページは縦長が基本だったのに対して,テレビもパソコンも画面は基本的に横長である. 情報処理学会などは,論文誌まで横長にしてしまった. デジタル・サイネージでも横長の画面はつかわれているが,おおくは縦長である. これまで広告空間でなかった柱などの 「すきまをうめる」 には縦長がよいのだろうが,WBS (テレビ東京の 「ワールド・ビジネス・サテライト」) で登場してくるディスプレイも縦長だ. 横長のテレビ画面のなかに縦長のデジタル・サイネージ画面が登場する (もっともサイネージとしてつかっているわけではないが). しかも操作はけっこうむずかしいようだ. しょっちゅうまちがえている. とてもふしぎな世界だ.
駅などにもデジタル・サイネージが設置されるようになってきているが,これが第 2 のふしぎだ. 東京メトロの中野坂上駅にも比較的最近,壁面にディスプレイがとりつけられた. これは横長画面であり,動画を再生している. たぶんテレビ CM とおなじものを再生しているのだろう. 音もちいさいので,だれも注目していない. 電車がはいってくれば,さえぎられてしまう. テレビ CM がその効果を最大化するためにくふうをかさねているのに対して, このディスプレイは電車を待つ客に積極的にはたらきかけているようにはみえない. これまで壁にあったカンバンをおきかえて 「すきまをうめて」 いるだけのようにみえる. 東京メトロもいまはここから収益をあげることをかんがえていないから,こういうことができるのだろう. しかし,こんな消極的なやりかたから,なにものかがうまれるのだろうか? ただ,むだにコストをかけているようにしかみえない. (写真は東京メトロから借用した中野坂上のサイネージの写真)
建物にとりつけられているディスプレイにも第 3 のふしぎがある. 国分寺の駅前のパチンコ屋にもおおきなディスプレイがとりつけられている. しかし,ここはもともとみるべき場所ではなかった. だから,ディスプレイがとりつけられたいまでも,すくなくとも私の目はそこにはいかない. はじめて国分寺にきたひとなら,いろいろ視線をうごかして,このデジタル・サイネージが目にはいるのだろうが,おおくの客にとっては私とおなじなのではないだろうか. それに,これから電車に乗る客はそもそもここをみない. 建物にとりつけられたほかのディスプレイをみても,ただ,これまで 「なにもなかった」 「すきまをうめて」 いるだけのようにみえる. 大型のディスプレイはかなり高価なはずだから,コストを回収するにはもっと積極的に設置場所を検討しそうなものなのだが…