この 10 年くらいのあいだに世界は急速に変化し,今後も急速な変化がおこることが予測されています. ここ 10 数年,日本は停滞した状況にありましたが,それゆえに世界との関係はかえって急速に変化し,それにともなって今後は日本も急速に変化することが予想されます. こういうなかで,我々はどちらにすすむべきなのでしょうか? すこしかんがえてみたいとおもいます.
資本主義経済においては,分業,大規模化,集中,グローバル化がめざされてきました. ひくいエネルギー・コストのもとではものを移動させてもそれほどコストがかからないからです. しかし,温暖化をはじめとする環境問題が深刻化し,エネルギー・コストが大幅に上昇すると,そういう方向はかならずしものぞましいものではなくなってきます.
逆の極端は自給自足です. 完全な自給自足を復活させることはかんがえられませんし,情報通信のグローバル化は今後もさらにすすみ,過去にもどることはないでしょう. しかし,モノに関しては分散的な生産・消費をゆるいネットワークによってむすぶシステムがひとつの理想形になるのではないでしょうか?
すくなくとも最近まで,情報通信技術は最先端技術であり,主役でした. すくなくとも情報通信技術者たちは,そうおもっていたでしょう. しかし,ユビキタスの時代,つまりコンピュータがみえなくなる時代 (「ユビキタス・コンピューティングとエージェント指向コンピューティング」 参照) には,もはやコンピュータは主役ではなくなる,つまり情報通信技術は主役である 「みえる技術」 をささえる脇役になるのだとおもいます. 主役はむしろ農林水産業や鉱業などなのではないかともおもいます.
日本はまわりを海でかこまれているため,過去には国や陸上の資源をまもるのはむしろ容易だったということができます. おおきな船をつくることがむずかしかった時代に,船で日本までやってくるのは容易でなかったからです. ところが,せまい国土におおくのひとがすむ日本にとって,日本をかこむ広大な経済水域にある魚貝類や海底資源は貴重な資源です. ところが,これらは海賊などによってうばわれる危険があります. 道がなければ容易にはいることができない陸地とはちがって,海はどこからでも船ではいりこむことができます. 大型船で資源を根こそぎ,もっていくことも比較的容易です. 一方,それをふせぐのは容易ではありません. 今後,資源をまもるためには周到な防衛体制が必要になるでしょう.
2 つの語をくみあわせて Google などで検索するととてもおもしろい結果がでることがありますが,「ビニールハウス」 と 「温暖化」 もそういうくみあわせのひとつです. 検索の意図は 「ビニールハウス栽培は温暖化を促進するか防止するか?」 という問題のこたえをさがすことでした. 当然のように yes と no の両方のこたえがみつかりますが,予想していなかったおもしろい検索結果がありました.
日本の土地は米作に適していますし,米作が必要とする大量の水を供給することができます. 世界的な水不足によって,こうした米作に適した土地はへってきています. 日本はゆたかな水をいかす農業戦略をとるべきではないでしょうか?
三浦 展 や共著者たちは 「ファスト風土化する日本」,「下流同盟」 などの本において,アメリカではウォルマートがまちをこわし,あちらこちらでその出店につよい反対運動がおこっているとのべている. ウォルマートの出店が地元の商店街をだめにし,非正規雇用をふやして低賃金ではたらかせ,まち全体をだめにしてしまうという. また,生産者への徹底的な値下げ要求によって,工業などにも影響をあたえている. 日本ではジャスコがウォルマートにちかいやくわりをはたしている.
日本では消費者政策がもっとももとめられていた時代には生産者中心の政策がすすめられてきたが,より生産者政策が重要になってきたいまになって,消費者庁の設立というような消費者政策を重視しているようにみえる. これはもしかすると日本にとって危機的な事態なのではないだろうか?
露地栽培とくらべるとプランター栽培はどうしても面積がかぎられる. そのため収量もすくなくなりがちだが,この本にはプランターにおどろくほどぎっしりと野菜がつくられた写真にみちている. これならプランターでも常時たべられるだけの量が収穫できるだろう. ただ,うすい本のなかに数 10 種類の野菜のつくりかたがかいてあるので,それぞれについては記述がものたりない.
評価: ★★★★☆
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2007 年 7 月に出版された本であり,この本が書かれたあとに急激に食糧価格が高騰した. この本は食糧価格の上昇を予測し,日本も対策をとるべきだと主張している. すなわち,国内の農地を利用しつくすこと,リサイクルを徹底すること,海外との連携を徹底することが必要だといっている. いまやさらにこれらの主張はおもみを増しているといってよいだろう.
評価: ★★★☆☆
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紛争のタネにもなっている水にかかわる国家間の問題や日本における水の問題などについて書いている. 著者も日本人は水資源の問題には無関心になりやすいと指摘しているが,アジアの水問題に関しては日本が指導的なやくわりをはたすべきだと主張している. しかし,「湯水のように」 水をつかう日本人にそのやくわりがはたせるのだろうか?
評価: ★★★☆☆
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世界の食料事情が逼迫するなかで,日本政府は未来を予測せず,過去の分析をもとに 「農政を転換する根拠はない」 といっている. 著者は,いまこそ政策を転換して,減反政策をやめて食料を大増産し,積極的な農家を優遇する政策をとるべきだと主張している. 私もこの本が国民の意識をかえ,食料自給率をたかめる方向に作用することを希望する.
評価: ★★★☆☆
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タイトルからすると農協をどのように改革するべきかが中心テーマのようにみえるが,実際は大半のページが (2002 年) 現在の農協の問題点の指摘にあてられている. 巨大化してさまざまな事業をおこなうことの是非に関する議論 (是の部分もある),自民党との癒着,マスコミからのバッシングなどの問題がとりあげられている. 最後の章は 「「農協」 の時代」 と題されて,食料危機がちかづき安全性が問題にされるなかでの農協のやくわりがおおきいと主張している. バランスのとれた内容ではあるが,改革の方向に関してはキレがない.
評価: ★★★☆☆
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日本の国土はせまいが,排他的経済水域は非常にひろい. 現在は不況のため石油も農林水産物も価格がさがっているが,いずれまた高騰するのはまちがいない. それをみこして,経済水域内の資源を他国にとられないようにするための制度や研究をすすめる必要がある.
日本でも 「フェアトレード」 の運動がすこしずつ,めだつようになってきたようにおもう. しかし,私自身はあやふやな経済外のものを貿易のなかにもちこむことを積極的に肯定する気にはならない. ところが,1 月 20 日の NHK 「プロフェッショナル」 でとりあげられていた まぐろ仲買人の 藤田 浩毅 は,まぐろを競る相手がいないときでも適正とおもう価格で競り落とすという話をきいた. これは,あるべきフェアトレードのかたちだとおもった.
プランターで農業のまねごとをしているが,平日はほとんどめんどうをみることはできないし,知識もかぎられている. この雑誌をみるとプロにはとてもかなわないということがよくわかる. この雑誌をみることによって,また農業のまねごとをすることによって,ほんとうの農業がどういうものであるかをかいまみることができるだろう. そうやって眼力をやしなって農業人をみれば,ホンモノかニセモノかもただしくみぬけるようになるだろう.
評価: ★★★★☆
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日本の農業が世界経済のなかでうまくやっていけるにはどうすればよいかを論じている.企業参入の障壁をなくし,ビジネスモデルをくふうする必要があるというのはそのとおりだろう.日本のコメの価格をアメリカ以下にする必要があり,それは十分に可能だという.最近は飼料米の生産がふえているが,それもコスト的になりたつという.その根拠が十分には書かれていないのでまだ信じられないが,きくに値する意見である.
評価: ★★★★☆
政府は日本の自給率がひくいことを問題にしているが,その自給率の定義は日本固有のものだという. そこから出発して,民主党政権もふくむこれまでの農政を批判している. 論旨にはあやしい部分もあるが,ふんだんに統計をとりいれて,客観的に議論しようとしている. 重要なのは,これが農業をめざす専門誌編集者である著者が真剣にかんがえた結論だということだろう. 日本の農政についてかんがえるとき,ぜひ読むべき本のなかの 1 冊だろう.
評価: ★★★★☆
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著者は日本の農業が無秩序化し崩壊しようとしているという. 明治以来の歴史をたどり,自民党や民主党のくるくるかわる農政を批判している. そして,最後の章では 「日本農業の理想像」 と題されている.
この本を読めば日本の農業の問題点はいろいろとみえてくるのはたしかだが,コメ以外の作物のことはあまりみえてこない. また,農業の理想像をえがくのに成功しているとはおもえない. 理想像がえがけないのであれば,基本的にはふるい体制が崩壊するなかから,あたらしいものがうまれそだっていくのを待つしかないのではないだろうか. この本は日本農業へのレクイエムだと著者はいうが,秩序の崩壊が破滅につながるというのは悲観的にすぎるようにおもえる.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: さよならニッポン農業@ , さよならニッポン農業@Amazon.co.jp.
カロリー自給率という指標が適切かどうかを吟味しないまま,危機感をあおる議論をすすめている. 自給率をたかめるための対策として著者がかねてから主張してきた 「高付加価値農業論」 をとりあげているが,これは 「水気耕栽培」 をひろめようというものであり,うけいれられていない独断的な主張だとかんがえられる. もうすこしバランスをとった記述が必要だろう.
評価: ★★☆☆☆
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最近,TPP (Trans-Pacific Partnership) に関する本が続々と出版されつつある. 菅政権によって急にもちだされた TPP 問題だが,賛成するにせよ反対するにせよ,急いで対処しなければならないわけだから,当然のことだろう. ところが,すでに出版されたり,ちかく出版されようとしている本はほとんど反対派のものだ. 賛成派はどこにいったのだろう?
TPP が日本の農業をダメにし,デフレをもたらして国民に深刻な影響をあたえると主張している. しかし,TPP をあたまごなしに否定しているわけではなくて,TPP は劇薬だともいっている. つまり,うまくつかえば成功する可能性もあることを示唆している. それでも否定しているのは,菅内閣をはじめ現在の政治状況では成功のみこみがないときめつけているからだ. その政治状況がくつがえらないかぎり,TPP をとろうと,すてようと,日本は壊れるのではないだろうか.
評価: ★★★★☆
関連リンク: TPP が日本を壊す@ , TPP が日本を壊す@Amazon.co.jp.
一時,福島第一原発事故からくる風評被害が深刻な問題とされていた. いまでは市場もおちつきをとりもどして,福島や茨城の農作物が買いたたかれることもすくなくなっているようにみえる. おもいおこしてみれば,このような風評被害は決して国内の商品だけでおこっていたわけではない. 中国製の商品への不信がたかまって,中国だけでなく台湾など,他の国の商品にまでひろがっていたことをおもいだす. 他国のことだというので,あまりおおきくとりあげられなかったが,いわれのない風評で被害をうけていたことはかわらない. 海外への影響にも注意をはらっていく必要があるだろう.
副題に TPP という文字がみえたので買ってしまったが,基本的には TPP に関する本ではない. JA グループのさまざまな組織の問題点や,対立点がふえている農家との関係などについて書いている. ときどき統計も登場するが,著者の意見をうらづけるには十分ではない. 農協やその支持者に対して戦闘的な態度をとっているが,もうすこし冷静に対処するほうが支持者をふやすことになるのではないだろうか.
評価: ★★★☆☆
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災害による観光業の被害や銀行の取り付け騒ぎなど,さまざまな風評被害が分析されている. そのなかには放射能に関するものもあるが,おもに東日本大震災よりまえの事件がとりあげられている. 最後の 2 章はこの震災における風評被害にあてられているが,のびのびになっていたこの本の出版が震災を機会に加速されたということだ. 立場によっておなじ 「事件」 が風評被害とみなされることもあり,そうでないこともあるというあやうさも,とりあげられている.
評価: ★★★☆☆
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東日本大震災で液状化した水田のなかには,今年は稲作をあきらめたところがすくなくないという. 砂がふきだして凹凸ができたり,砂でおおわれたためそのままではポンプで水がためられなくなったりして,稲作が困難になったという. 農家によっては他の作物をつくったり,安価なポンプを買って稲作をこころみたりしているという. 耕作放棄するにはそれだけの理由があるのだろうが,やる気がないのではないかと,うたがわけるケースもあるようにおもう.
野田首相が TPP 交渉に参加する方向で各国と交渉をはじめることをきめた. この決定を支持したい. しかし,いまおこなわれている TPP の議論は一面的であるようにおもえる. つまり,その議論においては実利ばかりが議論されているようにおもえる. 鳩山首相の時代には民主党は理念をだいじにする党だとおもっていたが,鳩山首相が失敗をかさねるなかで,理念はふきとんでしまったようだ. しかし,TPP をささえるのは 「あたらしい自由貿易のルール,つぎの時代の貿易のやりかたを確立する」 ということにある,つまり理念が重要なのではないだろうか?
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